個人投資家の投資先として目にする機会の多い「ヘッジファンドダイレクト」と「みんなで大家さん」、共通する特徴として両社とも行政処分を受けたという過去があります。
(正確にはヘッジファンドダイレクトの前身であるアブラハム・プライベートバンク株式会社が行政処分されたのですが、分かり辛くなるので本記事ではヘッジファンドダイレクトと表記していきます。)
行政処分と聞くと何だか怒られるようなことをしてしまったんだろうな~とネガティブな印象を抱くのは当然ですね。ですが、詳細はよく分かりません。
こういった疑問を解決すべく2社の行政処分について分かりやすく解説していきたいと思います。
ヘッジファンドダイレクトの概要
ヘッジファンドダイレクトを訪問しました
まずはヘッジファンドダイレクトがどんな会社なのかから見ていきましょう。
ホームページや資料を読み込むのはもちろんですが、私は実際にヘッジファンドダイレクトを訪れて面談もしていますのでかなり踏み込んで詳細まで確認しています。
東京の大手町ファーストスクエアまで行ってきましたがオフィスは非常に立派なものでした。
ヘッジファンドダイレクトは一言で言うと投資助言会社です。投資家の資産を増やすためにアドバイスをしてくれる会社です。
具体的には、ヘッジファンドダイレクトが投資家のために良さそうな海外ヘッジファンドを選んで紹介してくれます。
ヘッジファンドダイレクトと証券会社の違い
ヘッジファンドダイレクトは投資助言会社であり証券会社などの販売会社ではありません。
販売会社はファンドの販売手数料が収益となるため、投資家の資産を増やすことよりも販売手数料が高いファンドをおすすめしてくる傾向があります。
一方で、投資助言会社であるヘッジファンドダイレクトは投資家から運用残高に応じた手数料をもらっています。
運用残高が増えれば増えるほどヘッジファンドダイレクトが投資家からもらえる収入も大きくなりますので、顧客の資産を増やすためのファンド選びをしてくれます。
その理由としては、ファンド側から手数料をもらっている訳ではなく投資家から手数料をもらっているのがポイントです。
あとでまた出てきますのでここはぜひおさえておいて下さい。
みんなで大家さんの概要
みんなで大家さんの仕組み
続いて、みんなで大家さんがどんな会社なのか見てきましょう。こちらも資料を取り寄せてしっかりと分析しました。
みんなで大家さんは、その名の通り個人投資家がお金を出し合って共同で不動産オーナーになろうという商品です。
不動産の仕入れから管理、売却までみんなで大家さん(都市綜研インベストファンド株式会社)が一括でやってくれます。
投資家はお金を出資するだけであとは何もせずに利益が分配される仕組みとなっています。
みんなで大家さん42号
具体的にみんなで大家さんに投資しようと思ったら個別の商品に申し込む必要があります。
例えば、こちらの商品です。
こちらは福岡県遠賀郡水巻町にある物件です。植物の研究・生産・販売をしている事業者に対象不動産を賃貸し、そこから得られる賃料を投資家に分配します。
物件自体はグランモールというショッピングセンターの一角となっています。
不動産投資と言えば都会のマンション投資が人気ですが、みんなで大家さん42号は福岡県の都会とは言えない地域のショッピングセンターに投資する商品となっています。
ここまでヘッジファンドダイレクトとみんなで大家さんの概要について見てきましたが、気になる利回りについても確認しておきましょう。
注目の理由!利回り比較
ヘッジファンドダイレクトの期待利回り
ヘッジファンドダイレクトで紹介しているファンドはいくつもありますが、例えば3つのファンドの期待利回りはこちらです。
ファンドA:平均リターン12.7%
ファンドB:6.14%
ファンドC:19.22%
非常に高い数字が並んでいますね。投資先は株式や債券となっておりますのでもちろん元本保証ではありません。
利益が出ることもあれば損することもありますが、平均すると上記のような数字になっているということです。
みんなで大家さんの期待利回り
みんなで大家さんでは資料に期待利回りが明記されています。
想定7.0%とはっきりと書いてあります。さらに、元本保証ではないが元本の安全性を高める工夫をしているとの記載があります。
こういったうたい文句な訳ですね。
ヘッジファンドダイレクトもみんなで大家さんも利回りだけを見ると投資したくなってしまいますが安易に決断してはキケンです。いよいよ行政処分の内容について見ていきましょう!
ヘッジファンドダイレクトの行政処分の内容
ヘッジファンドダイレクトの3つの違反
ヘッジファンドダイレクトが金融庁に指摘された違反項目はこちらの3つです。
①無免許販売
②誇大広告
③顧客への利益提供
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①無登録販売
法律的には本来必要な第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業の登録をせずに無登録で販売を行った点が問題となっていますが、投資家にはどのように影響するのか考えてみましょう。
本来、ヘッジファンドダイレクトは販売会社とは異なりファンドから手数料はもらわず投資家からもらっているので顧客本位の助言であるのが強みでした。
しかし、実際には海外ファンドからも販売手数料を受け取っており実質的には販売会社と変わらない立場で投資家への助言を行っていました。
つまり、一般的な販売会社と同様、顧客の資産を増やすのではなくてもらえる手数料が高いファンドをおすすめする傾向にあったいうことです。
②誇大広告
ヘッジファンドダイレクトはテレビや雑誌、電車の車内、インターネット等幅広く広告活動を行っていました。
その中で、他者商品と比較し自社商品が15.34%と最も高い利回りだと宣伝していました。
しかし、実際には15.34%の利回りを上げたとする商品をヘッジファンドダイレクトが紹介したことは無く、ヘッジファンドダイレクトの助言を受け契約した投資家もいませんでした。
過去成績を参考にする投資家は多いですので、ちょっとひどいかなと思います。
③顧客への利益提供
ヘッジファンドダイレクトは、特定の顧客から助言報酬を免除してほしいとの依頼がありそれに応じてしまいました。
理由としては、過去実績から想定した利回りに遠く及ばないからとの事ですが、免除額は939万円に上りました。
顧客の利益に追加するため財産上の利益を提供することは金融商品取引法違反です。
みんなで大家さんの行政処分の内容
みんなで大家さんの違反事項
みんなで大家さんの行政処分の内容について見ていきましょう。違反したとされる事項はこちらです。
①32億円の資産過大計上
②契約書面等の不備
みんなで大家さんは東京都から1ヶ月の一部業務停止、大阪府から2ヶ月の一部業務停止の処分を受けています。
32億円の資産過大計上の詳細
大阪府によると、みんなで大家さんは、資産を32億円過大に計上することで健全な財務体質であると見せていましたが、実際には31億円の債務超過となっていました。
不動産特定共同事業を営むには純資産が資本金の百分の九十を満たす必要があり、こちらの条件に遠く及ばない状況でした。
みんなで大家さん側は、あくまで会計処理において適用する法律の違いであり実態としては債務超過ではなかったと主張しています。
ここで、大阪府が細かく指摘した内容を見てみましょう。
①利息や融資手数料等(5億6190万円) | 対象不動産の取得原価に含めるべきでない、支払利息、共同事業報酬、融資手数料、融資紹介料及び融資に関わる仲介手数料の合計額5億6190万円を資産計上 |
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②業務委託料(27億4357万円) | 対象不動産の取得原価に含めるべきでない、パンフレットの作成、広告宣伝など不動産特定共同事業の営業にかかる業務委託料27億4357万円を資産計上 |
③減価償却費(2687万円) | 中古資産の残存耐用年数を合理的な根拠のない算出方法により見積もり、減価償却費を2687万円減少させ資産計上 |
④評価益の未計上(8400万円) | 時価のある有価証券の資産計上にあたり簿価のまま計上し8400万円の過少計上 |
④の有価証券のみ過少計上ですが、①~③の約32億円は過大計上です。内容を見てもパンフレットの作成など明らかに不動産の価値にはならない項目を含めて資産計上しています。債務超過をごまかしたのでは?と思われても仕方がない気がしますね。
行政処分を受けての総評
今回は「ヘッジファンドダイレクト」と「みんなで大家さん」の行政処分について解説してきました。
もちろん会社側の主張もあり完全に行政の指摘する通りではないかもしれませんが、行政から指摘があったということはその当時何らかの不備があった事は事実です。
そして、指摘通りであるならば看過できない内容となっていました。
リスクを避けたい投資家の方は、投資をしなくてもいいと思います。
ですが、注意してほしいのはこれらは過去の話で当時不備があったという話になります。
当然ですが企業は行政処分を下された後、業務改善を行っているはずです。今は改善されていると判断できる方は投資を検討してみてもいいと思います。